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鳥取地方裁判所倉吉支部 昭和42年(ワ)51号 判決

主文

被告は原告に対し一、四〇〇、〇〇〇円及びこれに対する昭和四二年六月一日から右支払ずみまで年一割二分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

この判決第一項は原告において四七〇、〇〇〇円の担保を供するときは仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

原告

主文一、二項同旨の判決

被告

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

との判決

第二  請求の原因

一、訴外池田久仁雄は、昭和四一年五月三〇日被告に対し一四〇万円を利息年一割二分、弁済期日昭和四二年五月三一日の約定で貸付けた。

二、右訴外人は、昭和四二年四月二六日右訴外人の被告に対する右債権を原告に譲渡し、右同日その旨被告に通知した。

三、被告は弁済期日までの利息を支払つたのみである。

四、よつて、原告は被告に対し一四〇万円及びこれに対する弁済期日の翌日である昭和四二年六月一日から右支払ずみまで約定利息である年一割二分の割合である遅延損害金の支払を求める。

第三  被告の答弁と主張

一、請求原因一項は認める。同二項は不知、但し訴外池田久仁雄から被告に対し昭和四二年四月二六日付を以つて債権譲渡の通知がなされたことは認める。同三項は認める。

二、被告は昭和二九年一一月頃から訴外表稔を雇用していたが同人の横領の事実が判明したため昭和四一年九月二〇日同人の身元保証人である池田久仁雄を呼んだところ、右池田が被告に昭和四一年四月に差入れていた身元保証書は原告が久仁雄の氏名印を冒用して作成したものであることが判明したので、被告は久仁雄に前記表の横領の事実、その金額が三〇〇万円をこえていてなお調査中であるが今後増えることが予想されることを告げ後始末を相談したところ久仁雄は表の横領については告訴しないよう懇願すると共に被告の蒙つた損害について賠償することを約し右同日改めて自署による身元保証書を被告に差出した。表の横領金額合計は四、八一四、六三五円である。

三、被告は昭和四二年五月一日久仁雄及び原告に対し右損害賠償債権をもつて原告主張の債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をした。

四、よつて原告の請求は失当である。

第四  原告の答弁と主張

一、訴外池田久仁雄が昭和四一年九月二〇日被告に対し訴外表の身元保証した事実は認めるが身元保証をするに至つた事情は否認する。

被告は訴外表が金員を横領している事実を知りながら久仁雄にこれを秘して身元保証させたものであり、同人の保証の範囲は昭和四一年九月二〇日以降被告が蒙つた損害に限られ、それ以前には及ばないものである。

二、仮に、身元保証した以前の事由により被告が蒙つた損害についても保証乃至債務引受けをなしたものであるならば、訴外久仁雄は表が将来も引続き被告と正常な雇用関係を継続し得るものと信じて身元保証したものであるところ被告は前記のとおり表が過去数年来多額の不正をなした事実を知り、表にこの整理をなさしめていることを秘して久仁雄に身元保証をなさしめた直後の昭和四一年一〇月末日表を解雇したもので右身元保証は要素の錯誤あるもので無効である。

三、訴外表の横領金額は一、五五四、六六八円であるところ、昭和四二年三月三〇日までに全額弁済がなされており、被告が相殺の意思表示をした時点においては既に被告主張の損害賠償債権は存在しなかつた。

証拠(省略)

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